真智の火のゆくえ
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内容紹介
将也もそれまでは私と一緒になってげらげら笑っていたのに、その一言を聞くと足を止めた。そしてあろうことか、うつむいて耳まで赤くしたのだった。
「なんだよそれ」
私は一瞬、将也が怒ったんじゃないかと思った。でも違った。
「なんだよそれきーたことねーよ」
将也は照れていた。ぐいっと顔を外に逸らして、
橋の上から、山裾にあるため池のほうを見ていた。
その瞬間の気持ちを私は忘れない。
将也に心はあった。五歳から毎日のように同じ場所に通って、
初めて見ることができた。私の一言で、初めて。
幼なじみの将也は、真智にとって子どもの頃から特別な存在だった。
ふたりは、大学進学をきっかけに上京、やがて自然に結ばれる。
けれど、真智に向かって将也は言った。「お前、ほかに男つくれよ」と。
恋人とも呼べない男に翻弄されながら、
次第に自分を見つめ直していく女子の心を追った物語。